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「ミサ曲」- 歌手、演奏家、およびダンサーのためのシアター・ピース("Mass" A Theater Piece for Singers, Players, and Dancers)

Leonard Bernstein

レナード・バーンスタイン

CSCR8409~8413 / CBSソニー・レコード(株)

指揮:レナード・バーンスタイン
司祭(バリトン):アラン・ティトゥス
合唱:ノーマン・スクリブナー合唱団、バークシャー少年合唱団
出演:アルヴィン・アイリー・アメリカン・ダンス・シアター

「ミサ曲」と題してはいるが、編成にはエレキ・ギターやシンセサイザー、ドラム・セットなども加え、音楽様式もジャズありロックありで、さらに副題にもあるとおりダンサーをも伴ったCD2枚分にも亘る巨大なシアター・ピースである。「ウエストサイド物語」のようなミュージカル作品や、ジャズのイディオムを含む交響曲の作曲でも知られるバーンスタインらしい、と言えばらしいのだが、それにしてもいったいこの「ミサ曲」はどういう作品なのだろうか?

作品は17のパートから成っているが、これらを見ると大きく3種類のパートに分けられることがわかる。オーケストラのみのパート、ラテン語で歌われるパート、そして英語で歌われるパートである。オーケストラのみの部分はさておき、ラテン語の部分では通常のミサの典礼文が歌われる(ただし司祭、とは言ってもジーンズを穿いた二十代の若者である)。英語の部分では、街頭の合唱やロック歌手、ブルース歌手(役)などが登場し、これと対峙するように人生の苦悩や心の葛藤が歌われる。「おれは金輪際『ワレ信ず』(Credoのこと)なんて云いやしないぞ。いったい誰なら『ワレ信ず』なんて云えるんだい...」(つまり、ラテン語は神の言葉、自国語は民衆の言葉ということのようだが、このような意図で言語を使い分ける表現の先例としては、マーラーの交響曲 第8番「千人の交響曲」がある。)

良く考えてみると、日本のポップスと違って英米のロックでは宗教的な題材を扱うことは多いし、上記のような内容の歌詞も決して珍しくはない。ポピュラー・ソングにも通暁した米国の作曲家が宗教音楽をこのようなスタイルで作曲するのは意外と自然なことなのかも。

仏教の場合、経典の内容は専門知識の必要な高度な学問であるが、キリスト教の場合は聖書は一般家庭にも置いてあるものだし、内容も大衆向けの平易な物語で書かれている。となれば、すでに歴史的な音楽様式となってしまった「堅苦しい」宗教音楽を、バーンスタインは現代人にわかり易い音楽語法で新たに再構成しようとした、ということなのかも知れない。

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