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ピアノ協奏曲 ニ短調(Concerto for Piano and Orchestra in D minor)

Ferde Grofe

ファーディ・グローフェ

JXCC-1078 / 日本ウェストミンスター(株)

指揮:ファーディ・グローフェ(Ferde Grofe)
/ロチェスター・フィルハーモニー管弦楽団(The Rochester Philharmonic Orchestra)
pf:ヘスス・マリア・サンロマ(Jesus Maria Sanroma)

初めてこの曲を聴いたときは、「えっ!?」と思った。短いファンファーレ風の冒頭が、これじゃまるで昔の青春ドラマかスポ根ドラマのタイトルバックではないか。すぐにいかにもピアノ協奏曲らしい華やかなピアノ独奏が入るが、続いて冒頭で提示された第1主題を両手の和音で奏する部分に入ると、どこかムード音楽の雰囲気が纏いつく。決して似ているわけではないが、筆者はふと、リチャード・ロドニー・ベネットの名映画音楽「オリエント急行殺人事件」の序曲を思い出した。

グローフェといえば、ポール・ホワイトマン楽団在籍中にジョージ・ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」のオーケストレーションを担当して成功を収め、シンフォニック・ジャズの立役者の1人として知られている。作曲の方はと言えば、組曲「グランド・キャニオン」ばかりが有名だが、他にも組曲「ミシシッピ」、組曲「ハリウッド」、組曲「デス・ヴァレー」、組曲「ハドソン河」、組曲「サンフランシスコ」、組曲「ナイアガラ瀑布」、組曲「万国博覧会」等々、これと同じジャンルの作品を数々発表している。中でも組曲「ミシシッピ」は、いくつかのフレーズが「アメリカ横断ウルトラクイズ」で繰り返し使われていたため、この番組と同時代の人の中には、聴けば、あぁ、あれか!と思う人も多いだろう(もしかすると「グランド・キャニオン」より馴染みがあるかも??)。これらの活動からイメージされるに、グローフェという作曲家は、アカデミックなクラシックの作曲家というより、アメリカの作曲家に多いエンターテイメント系のセミ・クラシックの作曲家という方が近いだろう。

さて、ピアノ協奏曲だが、ガーシュウィンにもへ調の作品が1曲あったが、グローフェのこの一楽章の協奏曲は、やはり芸術というよりはどこかショービズの世界。フレーズの山場をスネアドラムのロールで盛り上げていくところが、ショーかサーカスの音楽を思い起こさせたりするのが余計そう感じさせるのだろう。伸びやかに第2主題を奏する部分は益々ムード音楽っぽさを呈し、わずかにラフマニノフを感じさせる所もあるが、スラブ臭なぞは無くあくまでカラリと明るい。音楽的に格別深いものは感じられないが、途中、ピチカートのリズムに乗ってピアノのグリッサンドがパラン、パランと第2主題を奏していくところなど、中々に面白い部分もある。

アメリカの一流エンターティナーが生み出した、程良く軽口のピアノ協奏曲と言えようか。

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