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ピアノ協奏曲第1番 二短調 K-213(父に捧げるピアノ・コンチェルト)

Kohsaku Dan

弾 厚作(加山 雄三)

FHCF-1118 / (株)ファンハウス

指揮:森岡賢一郎/N響団友オーケストラ
ピアノ:羽田健太郎

弾厚作とは、加山雄三が作曲を行う際に用いるペンネームであり、團伊玖磨と山田耕作の名から採ったことは周知のとおり。K-213はモーツァルトの作品に付けられたケッヘル番号に倣って弾が用いている作品番号であるが、他の番号はもちろんほとんどが歌謡曲だ。

このピアノ協奏曲は、弾が子供のころにクラシック好きだった父親(俳優、上原謙)に作曲を約束したものだということであり、父親が好きだったという6人の作曲家(ハチャトゥリアン、ラフマニノフ、ガーシュイン、モーツァルト、ベートーヴェン、ショパン)のスタイルが模倣されて登場するという仕掛けになっている。このようないわば私的な作品であるため、オリジナリティや新しいスタイルの創造性を期待して聴くと肩透かしを食らってしまうが、その辺を承知の上で割り切って聴くならばそれなりに楽しめる。

オーケストレーションは指揮者も務めた森岡賢一郎の指導を受けながら進めたとのことだが、第1楽章だけが先に完成し、残りの楽章は15年後になって完成した。第1楽章はラフマニノフからの影響が最も大きいが、主題の旋律からはどこか日本人の作る歌謡曲らしさも聴き取れる。第3楽章はベートーヴェンの作風が支配的な古典的な楽章で、「題名のない音楽会」の「加山雄三、わが心の歌」の回では本人の指揮、土屋律子の演奏で放送もされた。しかし個人的には、妻を亡くして孤独にさいなまれている父親の姿に想を得たという美しい第2楽章が最も気に入っている。

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