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ピアノ協奏曲 第2番 (Piano Concerto No.2)

Yutaka Makino

牧野 由多可

VICC-194 / ビクター エンタテイメント(株)

指揮:飯森範親/東京交響楽団
pf:瀬尾真喜子

邦人作曲家の作品には、西洋音楽の語法の上に日本人としてのアイデンティティを刻印しようとしたものも少なくないが、その切り口は作曲家により様々である。外山雄三のように民謡を直接的に引用した素朴なもの、伊福部昭のように農耕民族の土俗的バイタリティの表出を図ったもの、あるいは武満徹のように西洋芸術の美学の根底にある時間的・空間的な合理主義とシンメトリを突き崩すことで日本庭園のような造形美の創出を図ったもの等々。牧野由多可のそれは、日本の伝統儀礼や伝統芸能の様式美を西洋音楽の形式の中に転写しようとしたものに思える。乱暴な言い方をすれば、西洋の陶磁器の上に漆工芸の感性で文様を描こうとする行為に似ていると言っても良いかもしれない。代表作の1つ、「ピアノと弦・打楽器のための浄瑠璃幻想」などは、そのタイトルを見ただけで、バルトークを規範としながらその民族主義的な素材を伝統芸能に求めていくという方向性を、自身の立ち位置として標榜しているかのように思えてしまう。

ここに挙げたピアノ協奏曲第2番は、同曲と同じアルバムにカップリングされているもので、そうした作風を端的に体現した作品の1つと言えるだろう。作曲者によると、第1楽章は能楽ばやしの分析に基づいており、第2楽章は日本の祭りにおける山車の静かに進む様を念頭に置いたそうであるが、中でも、神楽的な祭礼舞曲だという第3楽章の舞のような躍動感は聴きもの。大拍子の如きボンゴとティンパニの掛け合いに乗って、バルトーク・ピツィカートの「ささら」が打ち鳴らされ、神楽笛よろしくピッコロが華を添える。そしてピアノが舞方のように激しく足踏みしながら、終結まで息をも切らせず突っ走るのである。各々方、心して聴きなされ!

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