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交響曲第3番 ニ長調 Op.10 『西海岸の風景』

Kurt Atterberg

クルト・アッテルベリ

(クルト・アッテルベリ)

(輸)CPO 999 732-2

指揮:アリ・ラシライネン
/NDRハノーヴァー放送管弦楽団

シューベルト没後100年を記念するコンクールで第1位を獲得し、賞金に因んで「ドル交響曲」の異名で呼ばれることもある交響曲第6番がアッテルベリの最も知られた作品であるが、さらに惹かれたのはこれと併録されている第3番の方だった。「西海岸の風景」と題された3楽章からなるこの交響曲は、楽章毎にもそれぞれ「太陽の霞」、「嵐」、「夏の夜」といった標題が付されており、いずれもアッテルベリらしい旋律美に満ちているが、最大の聴きどころは、その劇的な音楽の特徴が良く現れた第2楽章ではないだろうか。

標題は付いているが、「嵐」そのものを絵画的に描写しようとしたというより、むしろその雰囲気を叙情的に表現しようとしたものと思われる。しかし、旋律の伴奏はそれでもかなり描写的だ。ティンパニやトライアングルがロールしながらクレシェンドし、さながら海面に盛り上がり打ち寄せる波頭を思わせる。ティンパニやグラン・カッサ(大太鼓)とともに規則的に交互に打ち鳴らされるクラッシュ・シンバルのリズムはぶつかり合い飛び散る波飛沫を、トレモロする弦楽器の下降グリッサンドが吹きすさぶ風を連想させる。中間部で、一旦台風の目に入ったかのような静けさが訪れるが再び嵐は強まる。最後のクライマックスでは、この中間部で静かに暗示されていた旋律がその全貌を現し、シベリウスの交響曲第2番の終楽章から悲壮さを取り除いたような盛り上がりが最高潮に達するが、もう一回聴きたいと思わせるものの再び繰り返すことはなく静かに楽章が閉じられる。続く第3楽章は、夜というより嵐の過ぎ去った海に夕焼けの太陽が沈み行くように雄大に感動的に盛り上がって終わる。

ここには、素朴に自然のその美しさ、雄大さへの感動を表す対象としての海がある。マイナー曲には外れも多いが、アルヴェーンの第4番と並んで拾い物だった1曲だ。

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