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熱砂の惑星(ほし) イメージ・アルバム

Kiyoshi Yoshikawa

吉川 清之

BVCH-738 /(株)BMGジャパン

指揮:コンスタンチン D.クリメッツ、パーヴェ B.オフスヤンコフ
/ モスクワ・インターナショナル交響楽団

これは、映画ではなくプレイ・ステーション用ゲームの音楽である。イメージ・アルバムだけでサウンドトラックそのものはCD化されていないらしいのだが、ゲームの音楽は短くぶつ切りになる場合が多いので、オーケストラ物を聴くのであればイメージ・アルバムというのは音楽としてまとまっているという意味でありがたい場合もある。

物語は、環境破壊で他の惑星へ移住した人類が、希少な水を巡ってエイリアンと戦う羽目になるというものらしいが、筆者はこのゲームをプレイしたことは無い。店舗で見て直感で本CDを購入したのだが、これは大当たりであったと言えよう。

作曲者の吉川清之(よしかわ きよし)は、実写の映画やドラマ、特に警察・刑事系のドラマの音楽を務めることが多いようであるが、本作では本格的な管弦楽を用いて大作映画の音楽に劣らぬ聴き応えのある楽曲を提供している。

管弦楽は、3管編成に編入楽器としてハープ、チェレスタ、ピアノ、グロッケン・シュピール(鉄琴)、タムタム(中国起源の銅鑼)、および女声ボーカルを加えた編成であるが、弦楽器群を4管編成並みに16型(1stヴァイオリンが8プルト)に増強、-つまり通常の3管編成より10名多い70名に- してあることに加え、オーケストレーションが全体的に弦楽器偏重で、管楽器類の使用はかなり抑制気味である。そのため、ちょっと聞くと打楽器を加えた弦楽オーケストラなのかと思ってしまうのだが、そのことが、クラシック分野の近現代的な楽曲の類にも似たモノクロームな色彩感と律動感を与え、音楽全体に硬派なイメージを生み出しているのである。

アルバムはプロローグ(愛のテーマ)で幕を開けるが、続く序曲に出て来るテーマが重要で、この1つの短いフレーズがアルバム全般に渡って執拗に手を変え品を変え登場する。このような手法自体は決して珍しいわけではないが、奏法のバリエーションにも富んだオーケストレーションの妙で、最後まで飽きさせることなく聴かせ切ってくれ、作曲者の手堅い手腕を感じさせる。

作曲者は筆者には馴染みの無い名前であったが、本作は優れた力作であり、こうした管弦楽作品が他に少ないらしいのが残念である。しかし、これが裏を返せば、本作は作曲者にとって運命的な出会いであったのではないかと思わせる一品である。

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