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戦争の嵐(The Winds of War)

Bob Cobert (Robert Cobert)

ボブ・コバート(ロバート・コバート)

(輸)VSD-471802 / ヴァレーズ・サラバンド

ゾルト・ディーキー/ニュルンベルク交響楽団

「戦争の嵐」は、テレビ朝日開局25周年記念の第一弾として、1983年3月27日(日)から8夜連続で放送された米国のTVドラマである。本国で高視聴率を叩き出し、鳴り物入りで番宣が行われていた。

昔のことで細部は覚えていないが、ナチス・ドイツ時代の戦乱の中で生き抜くアメリカの家族の物語で、ロバート・ミッチャム、アリ・マッグロー、ジャン=マイケル・ヴィンセント、ピーター・グレーブスといった名優たちが多数出演していた大作である。

作曲のボブ・コバートの名を知ったのは、筆者はこの作品が初めてであり、また実のところその後も映画やTVでその名を見たことが無い。少なくともわが国では知名度があるとは言い難いだろう。しかしながら、本作は全般にメロディがわかりやすくて曲種もバラエティに富んでおり、大作ドラマ風に手堅くまとめられた佳品と言えよう。暗雲が流れていくオープニングで流れる、ちょっと哀愁を含んだ流麗なテーマ音楽も、数十年前の一過性のドラマの音楽だったにも関わらず「風と共に去りぬ」のような往年の名作映画の音楽と同じように記憶に留まり続けている。

このテーマ音楽は、チャプター10の"Bayron And Natalie's Wedding" でもアレンジされて登場する。結婚式の準備を喜々として進めるバイロン(ジャン=マイケル・ヴィンセント)とナタリー(アリ・マッグロー)が役所でハンコを押してもらったりしているシーンが、番組の内容をほとんど忘れてしまっている今でも、ややコミカルな味付けの軽快な音楽と共に鮮明に思い出される。

そして、中でも印象的なのは"Prelude to Pug's Bombing Mission"である。曲のタイトルが意味するところはすでに忘れてしまったが、風格と威厳を感じさせるその音楽は、どちらかというと大統領フランクリン・ルーズベルトの登場するシーンで、ルーズベルトのテーマのように使われていたように思う(記憶がどの程度正確であるかは今となっては定かではないが、音楽の性格からそのように強く印象付けられたのであろう)。

実は、(少なくとも本記事を書いている時点でネット上で調べてみた限りでは)意外と知られていない事実であるが、本作の放送から8年後に制作されたOVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)作品「機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY」のサウンドトラックには、この曲(およびチャプター12の"Danger! Neutrals At the Train Station")を模倣した曲が登場する()。この曲が印象に残るものであることが、単に筆者1人の感想ではないことの証拠と言っても良いのではないだろうか。

なお、惜しむらくは、音源の保存状態が良くなかったのか、アルバム全体に音質が荒れていることである。ダウンロード販売で購入した音声ファイルでも同様であるので、CDの劣化のせいではないと思う。

※)印象的な既存の曲が、引用やパロディに限らず模倣されることがあるのは映画やTVのサウンドトラックにおいては決して珍しいことではない。しかしながらこのガンダム0083に関しては、他人の手による同時代の映画音楽に酷似した曲があまりに多かったためかネット上でもやり玉に挙げられており、「一般のファンから指摘を受け、発売元のビクター音楽産業(現:JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント)が対応。2006年1月25日に発売された『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY-ORIGINAL SOUNDTRACK BOX-(New Version)』ではオリジナル作曲者の名前が明記された。」(Wikipediaより)いわく付きの作品となっている。

しかしこのCDのライナーの記載はこれまた非常に中途半端かつ不正確である。前述の"Prelude to~"が使用されたのは「アルビオン」という曲であるが、ライナーの記述ではオリジナル曲は「ブレインストーム」(音楽:James Horner)の"Michel's Gift to Karen"であると説明されている。確かに間違いではないのだが、それは冒頭と末尾のそれぞれごく短い部分の話であって、曲の主要な部分はほとんど"Prelude to~"なのである(さらに、U.N.T.(地球連邦軍)の一部でもこの曲がアレンジして使われている)。また、"Danger! ~"が使われた曲(陽動作戦)についてはオリジナル曲の説明すらない(Hornerの曲についても何曲か説明が抜け落ちている)。オリジナル曲について数々の指摘がなされているにも関わらず、大事なサントラが1つ見過ごされてしまっている感が拭えない。

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