東京オリンピック

Toshiro Mayuzumi

黛敏郎

TMSA-0003 / 東宝ミュージック(株)

指揮:飯守泰次郎、森田吾一 / 読売日本交響楽団

東京オリンピックと大阪万博(日本万国博覧会)、この2つは、我が国の戦後の高度経済成長期において、明るい未来と平和を象徴する歴史的モニュメントであった。それは、その後のオリンピックや博覧会の類に今日(こんにち)の我々が感じるような感情とは比べ物にならない程大きな憧憬を持って、同時代を生きた日本人の心に刻まれているようだ。ちょうど、洗濯機、冷蔵庫と並んでテレビが3種の神器と称された時代、オリンピックはテレビの普及、万博はカラーテレビの普及の契機になったという。そして、この2つの大イベントはいずれも映画にもなり、そのサウンドトラックは、前者を黛敏郎、後者を間宮芳雄(みちお)といういずれも現代クラシック作曲家の大御所が担当している。

黛敏郎の映画音楽と言えば、ディノ・デ・ラウレンティス製作、ジョン・ヒューストン監督のスペクタクル「天地創造」が名高いだろう。現在でも、輸入版ながら2枚組のCDでサントラの入手が可能である。これは日本人として初めてハリウッド映画の音楽を手掛けた快挙であったが、そのきっかけは、この「東京オリンピック」のサントラが製作者達の目に止まったからであるらしい。

筆者は当初米国版のレコード(MLP 8046 / Monument)を中古で入手したのだったが、まさか後にCDになるとは思いもよらなかった。映画の監督を務めた市川崑が亡くなったことがきっかけのようなので、東宝ミュージックの追悼企画というところだろうが、さらに嬉しいことに、録音技師のもとに残されていた音源から、映画本編には収録されなかった8曲を含めて完全収録したという。また、レコード版では各曲のタイトルは、レコード会社が映画での使用シーンとは関係なく勝手に付けたものということらしいのだが、その点もCDでは正しく訂正されているということだ。

さて、肝心の音楽の方はというと、福島地方の子守唄をベースにしたという無伴奏女声合唱によるオープニングに始まり、後のバレエ「ザ・カブキ」や「天地創造」を彷彿とさせるような黛サウンドともいうべきダイナミックな管弦楽による「棒高跳び」や「女子80m障害」、「重量挙げ」、コミカルな「競歩」、ジャズによる「自転車」等々、実に多彩。日本の映画音楽の名品として、黛のファンのみならず、黛音楽をこれから聴いてみようという初心者にも格好の入門書としてお薦めできる1枚だ。

偶然ではあるのだが、この記事を最初に書いてからわずか2週間後に、2020年のオリンピック開催地が東京に決定した。改めてこのサントラを聴きつつ、7年後のオリンピックに想いを馳せてみたい。

なお余談だが、やはり黛の名作サントラ、「黒部の太陽」がちっともCD化されないのはどうしたことか。「黒い太陽」の方はCD化されたというのに...。再び思わぬCD化に巡り会えることを期待して待つことにしよう(その頃は、音楽メディアの主流はCDではないかも知れない)。

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