オーケストラものに重点をおいた音楽への非正統派なご案内
Yuji Nomi野見 祐二 |
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VDR-1529 / ビクター音楽産業(株) 指揮 熊谷弘 vo:畑弥生 森谷美月、str:金子飛鳥グループ、 この作品は1993年からOVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)のビデオがリリースされており、チェリストであり「世界の車窓から」の音楽でも知られる作曲家、溝口肇による心にジワリと染み入るサントラ盤も出ているが、ここで紹介するのはそれより8年前に発売されたイメージ・アルバムである。よって、厳密に言えばアニメーションのサントラではないのだが、関連ジャンルとしてここで取り上げることにした。 原作は日渡早紀の漫画で、月に来訪した小人サイズの7人の異星人達が母星に起きた星間最終戦争の難を逃れながらも伝染病により全滅。その後、現在の日本のティーンエイジャーとして転生し再会を果たすが、ある理由から1人だけ7歳の少年として転生した紫苑は、前世で仲間の1人(秋海棠)から受けた陰謀に対する復讐心を胸に孕みつつ強力な超能力を駆使して謎の暗躍を始める...というややオカルトめいた所もある近未来超能力SFであるが、ストーリーの本質は人間ドラマを主軸にした少女マンガである。 現世の現代日本と前世の異星や月基地という異なる時代と舞台のエピソードが交錯しながら物語が展開するため、アルバムの構成も(LP当時の構成に従って説明すれば)A面とB面とで音楽コンセプトを変えた二部構成が採られており、現世を描くA面は、OVA版の音楽も担当した溝口肇ほか、野見祐二、門倉聡や大貫妙子らによるイージーリスニング系のコンピレーション、前世を描くB面は、野見祐二による声楽を伴うオーケストラを中心としたクラシカルな組曲となっている。ここで、もしA面の音楽だけだったらばわざわざここで紹介することは無かったのだが、B面に収録された音楽は、ジャケットのいかにも「少女マンガです」という水彩画のイラストから先入観で想像されるような内容を全く覆すものである。 野見祐二というと、グループ「おしゃれテレビ」時代に行っていた画廊の音楽などの活動で坂本龍一に見出されたことがきっかけとなって映画やアニメの音楽を手掛けるようになったことは良く知られており、坂本が共作のデビッド・バーンやスー・ソンとともに日本人初のアカデミー音楽賞を受賞した映画「ラスト・エンペラー」(ベルナルト・ベルトリッチ監督)でもオーケストレーションで参加している。アニメーションでは、やはり坂本龍一とのコラボレーションでゲルニカの上野耕路や窪田晴男らと参加した「オネアミスの翼(ビデオ発売時に「王立宇宙軍」に改題)」がある他、単独ではスタジオジブリの連作映画「耳をすませば」、「猫の恩返し」、やTVアニメーション「ぼくらの」で作曲を担当している。 作曲家には自己の独自の作風を確立して常にそのスタイルを貫き、作品を聴けば誰の作曲とわかるような伊福部昭や三枝成彰のようなタイプの人もいるが、野見祐二は作風を固定しないタイプの作曲家で、オーソドックスなオーケストラ作品である「猫の恩返し」から、シンセサイザーも交えて少年たちの過酷な運命を描いた救いのない「ぼくらの」まで作風に大きな幅があるが、本作品の場合はコンサートホールでもそのまま演奏できそうなシリアスな純音楽風の趣きさえある。以下、アルバムの構成に沿って簡単な解説を加えてみる。 第1楽章 Prelude~黎明 何のきっかけでこのような少女マンガ系のイメージ・アルバムなんぞ買ったのかさっぱり思い出せないのだが、アニメ・漫画音楽の大穴として紹介しておきたい1枚。 |
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