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ピアノ協奏曲 「見よ、西風からの富士」(Piano Concerto “Look! Mount Fuji in the West Wind”)

Shigeaki Saegusa

三枝 成彰

(三枝 成章)

ESCK 8032~3 / (株)ソニー・ミュージック・エンタテインメント

指揮:堤 俊作/新日本フィルハーモニー交響楽団
pf:神谷 郁代

番号はないが、過去に三枝は管楽器奏者がコーラの瓶を拭くなどの前衛的な内容を取り入れたピアノ協奏曲を作曲しており、これは事実上の第2番である。こちらはメロディへの回帰を標榜して以降の作品であり、激しい噴火によって富士山のできていく過程を表現したという派手な冒頭から、早くも三枝節全開である。三枝の手がけてきた多くのメディアの音楽などで聴かれるような旋律もふんだんに現れ、時に感傷的なまでに盛り上がりリスナーの涙腺を刺激する。良くも悪くもまさしく三枝成彰の音楽に違いない。

ピアノ協奏曲としては、ブゾーニのそれよろしく歌詞付の合唱を伴う点で珍しい編成となっているが、合唱付き部分が未完に終わった総合芸術構想からの転用であったブゾーニの場合とは異なり、それまでオラトリオ「ヤマトタケル」やオペラなどで行ってきたことの協奏曲への翻案と捉えても良いかもしれない。

考えてみれば、三枝成彰の協奏的作品は、シアターピース的な性格を持つものが多い。ピアノ協奏曲では、先の2曲に加えて次に作曲された第3番にあたる「イカの哲学」もナレータ―付きであるし、太鼓協奏曲「太鼓について」 も同様、チェロ協奏曲「王の挽歌」では冒頭に雷鳴の音響効果が入ったりもする。一方、この部類に属さないものとしては、ヴァイオリン協奏曲「雪に蔽われた伝説」や三絃協奏曲「1993-12-01 SANGEN」、フルート協奏曲がある。

さて、このピアノ協奏曲「見よ、西風からの富士」は、1楽章形式で演奏に30分近くかかる大曲だが、全体は4つの部分に分けられ、第2部では、管弦楽による4度の持続音の海に茫洋と漂うようにソロ楽器の旋律が奏される、この時期の三枝のほとんどすべての協奏曲の第2楽章に共通するスタイルがここでも踏襲されている。

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