クラッシャージョウ(OVA)

Keiichi Oku

奥 慶一

80331-30 /(株)バップ

演奏者:不明

クラッシャージョウというと、まず1983年の劇場映画版が思い浮かぶ。音楽を担当したのはジャズピアニスト兼アレンジャーとして著名な前田憲男で、いかにも大作SF映画風の雄大なスコアが付けられたサントラ盤(テーマの冒頭のファンファーレがTV番組「サンデー・ジャポン」でも使い回されていたので耳にした方も多かろう)は、当時のオリコン・チャート上位にも登場したが、ここで紹介するのはそれから6年後の1989年に製作されたOVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)の方の音楽である。

実を言うと、初めてビデオを見た時は、いかにもスペース・オペラらしいオープニング・テーマと、クローカー(劇中に登場する小さな球体状の群体ロボット)が登場する度にジョーズのテーマのように鳴らされる弦楽器の無調風のリズム動機(11曲目 Song In The Breeze)以外に音楽はほとんど印象に残らなかった。派手目な劇場版の音楽と比べると、米国のTVドラマ・シリーズのスタイルに良くあるように、あくまで物語に寄り添ったアンダースコアに徹し、音楽が前面に出ない控え目な作りになっていたからだ。ビデオ本編も良質な内容ながらそれほどヒットにも恵まれなかったようで、そのためか音楽も忘れ去られたような感があるが、CDを静かな環境でじっくり聞いてみると、完成度の高い味わい深い音楽であることに気付かされるのである。

作曲者の奥慶一は、新田一郎、兼崎順一、渡辺直樹らと共に日本初のブラス・ロック・バンド「スペクトラム」のメンバーであったことで知られているだけあって管楽器の活躍も目立つが、オーケストラの各種の楽器の特性を生かした奏法や、バラエティ豊かに組み合わせを変えて登場する楽器同士の掛け合いが面白く、聴いていて飽きさせない。オーケストラの規模は43人と比較的小編成であるが、ここではそのこともむしろ個々の楽器を際立たせ、音楽を立体的に聴かせることに貢献している。

近年、日本のアニメーションや実写映画の音楽では、古今東西の凝った音楽手法を取り入れた音楽も増えてきているが、表面的な面白さの顕示に走ったり、ハリウッド風の派手さばかり偏重したものも多く、このように本来の楽器の面白さに正面からきっちり取り組んだ音楽は意外と少ないのである。日本アニメーションの歴史の隙間に埋もれた、隠れた佳品と言えるだろう。

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