機神幻想ルーンマスカー

音源があったのかと早とちりされた方には申し訳ないのだが、そうではない。同名のコミックスの音による感想文として、筆者が曲を作ってみたものである。あくまで素人の趣味の範疇であり、稚拙な作品でお恥ずかしいものではあるが、文章よりもイメージは伝わるのではないかと思い切って公開してみることにした。よってこれらを名盤というつもりなのではなく、中断したままになっているこの作品がいつか再開されて映像化され、プロの作曲家によるまだ見ぬ名盤が登場するであろうことを期待しつつ、作曲家未定の番外編としておこう、という趣向である。

この作品をご存じない方のために少し紹介しておくと、アニメーションのメカデザイナーとしても有名な出渕裕によりかつて富士見書房の「ドラゴンマガジン」に連載されていたものだが、単行本の第1巻が'91年に発売されたもののどういうわけか休載に入り、そのまま今日に至るも再開されていない幻の作品である。が、連載開始から20年近く経過した現在でも続巻を望む声は絶えないようだ。(※筆者注:実はこの記事を書いて1年も経たないうちに徳間書店から第1巻が復刊され、連載も再開された)

最初にこの作品を見たとき、「これだ!」と感じた。様々な国や時代の文化様式を取り入れた洗練されたメカや衣装デザインなどは、まるでオペラの舞台を見ているような様式美で、ありきたりのファンタジーものとは一線を画しており、一流スタッフで映像化すればさぞかし音楽も素晴らしいものになるだろうと思ったのだ。「プッチーニのオペラとかチャイコフスキーばりの本格的なバレエ音楽のようにするとして、作曲家は朝川朋之もいいけどファイブスター物語とイメージがダブるし、天野正道だと誰でも最初に考えそうだから、この分野に手垢のついてない野見祐二あたりがいい...」などと自分勝手な妄想を膨らませていたのだが、ついに2巻は出ず、そのうち映像化どころか雑誌からも姿を消してしまった。

そもそも自分がサントラの作曲家になったとしたら手掛けてみたいような作品だったから、当時DTM(Desk Top Music)に凝り始めていた筆者は、それならということで初心者のくせに無謀にも自分で作曲してみようと思い立ったのだった。しかしある程度までいろいろ作ったところで、その後の私生活の何やかやでDTMからすっかり遠ざかってしまい、そのうちに使用していたシーケンスソフト(EMAGIC Logic Win98版)のメーカーがアップルに買収されてWindows版の開発が中止になるわ、我が家に残っていた98マシンもクラッシュしてしまうわで、もっと上達してからオリジナルのMIDIデータを手直しするという機会も失われたままになってしまった。幸い録音していたのでかろうじて音声データの形で当時のものが残っているというわけ。

そのうち世はインターネット時代になり、作品のファンも根強く残っているようなので、ホームページを立ち上げる機会に公開してみようという気になった次第。そんなわけで、出版社の方にはこんな酔狂なファンもいたということで、続編の発行など検討していただければ幸いである。

なお、「イメージが壊れたじゃないか!バカヤロー」ということになっても筆者は責任を負えないので、ダウンロードされる方はその点を心して聴いて欲しい(笑)。(容量の関係でwavファイルからmp3に圧縮したため、音質も元より少しザラついてます。)

※ 当然ながらコミックスや雑誌の著作権等の権利はその作者や出版社などそれぞれの権利者に所属しております。一方、下記のmp3ファイルは上記でも述べました通り、筆者がそれらを読んだ感想を音楽で表現してみたものですので、双方の間に関係はありません。また、再配布などはご遠慮ください。本コンテンツのご利用に際してのトラブルなどに関する責任も一切負いかねます。

1.伝説の始まり rm-01.mp3 (1.790MB)

特定のシーンをイメージしてはいないが、物語のプロローグのイメージで登場人物達のこれからの運命を想起させるような感じで書いた。この後にテーマ音楽が続くはずだったが、さんざん失敗作を量産した挙句ついにイメージに合ったものができず、本プロローグのみとなった。

2.王女二ケア rm-02.mp3 (1.227MB)

城の軍議の場への登場シーンをイメージしたが、快活なお転婆娘の面よりも、城の雰囲気と絡めてむしろ王女の気品と風格を前面に出すようにした。本当はもっと長い曲のはずだったが試作段階で終わっている。チェンバロが登場するが、物語が中世のイメージなのであまりバロック音楽風になりすぎないよう気を遣った。

3.レアル・パディス rm-03.mp3 (1.396MB)

静かに、しかし内に秘めた意志力と高貴さを表すようにした。

4.奇襲!ジパード大皇国 rm-04.mp3 (0.820MB)

最初にズドン!と一発来るのでご注意を。単行本p46でジパードのナイトマスカー「バサラ大将」の空挺部隊が飛来するシーンをイメージして作った。和風で土俗的な感じを出すために、ドミソと3度ずつ積み上げる西洋式の和音ではなく、ドソレと5度ずつ積み上げる和音体系を用いている。こうした手法は和田薫作品から学んだが、自分なりの工夫も入れた。基本的な和声は小山清茂ら「たにしの会」のまとめた日本和声の理論でいうヘ調陽旋法第1というものに相当するのだけど、ティンパニのソロを挟んで後半部でも一見前半部と同じことを繰り返しているように聞こえながら、実は途中の和音を少し捻ってある。陽旋法の和音を西洋式のSUS4の和音と見立てて長調の協和音に解決させ、前半部より少し明るくより安定感が出るようにした。短かかったので続きを考えたが、どれもこれも気に入らず結局そのままとした。

5.失われた王国 rm-05.mp3 (3.514MB)

単行本のp77~p85に基づいているが必ずしも場面展開に沿ってはおらず、筆者のイマジネーションで作ったもの。冒頭がラハ・ファーンの意識が過去の記憶へと遡って行くところを表現している点では場面通りだが、その後は緑豊かであった失われた祖国に思いを馳せるイメージで作っている。聖ジレイル王国については未だ物語で詳しく語られていないため全くの想像である(雑誌には記述があったかもしれないが、単行本になってから読むつもりだったため手元に全ては揃っていない)。サスペンダー・シンバルのロールに導かれて盛り上がっていくところあたりからしばらくはp82の下段の場面に触発されたもので、結界の向こうのまだ見ぬ世界に対する少年の遙かな憧憬と未来への決意を表現した。

6.攻防戦 rm-06.mp3 (2.020MB)

オベロン城のテーマとジパードのリズム動機を交互に出してイグラッドとジパードの攻防戦を表現した。具体的な場面展開に沿ったものではなく自由に展開した。

7.ロゴス rm-07.mp3 (1.489MB)

月女(ツクメ)とスレイプニールの心話(ロゴス)のシーンを表現したもの。月光をバックにした幻想的なイメージをベースに「ロゴス」という言葉から受けるコンピュータのようなイメージを無調風の音形で重ね、ラストでは月女の優しさを表現するようにした。

8.オベロン炎上 rm-08.mp3 (1.698MB)

全体はオベロン城のテーマに基づく変奏曲として作ったもので本来はもっと長いのだが、公開に際して自分でもあまり好きになれない前半部をカットしたため、唐突に始まる。冒頭の(本来は途中の)シンバルはp128のバサラの爆発シーンを表しており、そこから以降p133までのオベロンの落城を描いてみた。炎上する城から落ち延びるク・ホリンと二ケアの悲壮感をマイナー・コードで表しているが、メジャー・コードも織り交ぜて第1巻の山場であるこの部分をドラマティックに盛り上げるようにした。最後のチェロとトランペットのソロによる陰気な部分は、p132~133のラハ・ファーンと謎の人物の会話のシーンである。

9.メネアの歌 rm-09.mp3 (2.337MB)

単行本p161のメネアが壺からひょっこり登場するシーンから、p163までの歌を歌うシーンの流れに沿って作ったもので旋律部は日本語の歌詞に合わせてある。中世的なイメージが出るよう教会旋法を使い、伴奏部に竪琴を模してハープを入れてみた。p163でジパード兵の足元が画面に入ってくるところでティンパニを2発入れ、続く部分では歌詞の「光の矢が...」の部分をイメージしてグロッケン・シュピール(鉄琴)を加えた。構成としては気に入るものになったが、途中ホルンの前あたりで弦楽器が降下してくる部分が当時の腕ではどうしてもうまくいかず心残りになっている。

10.遙かなる憧れの世界 rm-10.mp3 (1.668MB)

単行本p172による。F→Fmという和声進行を使って少女の憧れを表現してみたが、やや子供っぽかったか。全体的に乱暴な作りになってしまった。

11.宮殿へ rm-11.mp3 (1.861MB)

単行本p175でジパードの使者として迎えに来た那由羅の案内でレアルが月女のもとへ向かってゆくシーンの音楽。たった1ページで描かれているが、劇場映画にしたら見せ場の1つになると思われ、セリフと効果音なしの長回しのカットで水の都の景色をじっくりと観客に見せてゆくシーンに付ける音楽を想像して作った。次のページからの月女との面会を音楽で予感させることを意図して、明らかにヴェニスがモデルになっている景色にもかかわらず和風の音楽を付けてみた。ジパードの曲と同じく5度系の和音を使っているが、マリンバ(低音域の木琴)やハープ、タンバリンにリズムを受け持たせるなどしてもっと宮廷風の雅な感じを持たせている。ハープのグリッサンドは水面の光の煌きや水鳥の群れが飛び立つ様をイメージしており、最後の能管を模擬したピッコロは次のページのシーンに被さって終わる。なお、音楽の進行がやや唐突になってしまっているのがもっと修正したかったところ。

12.レアルと那由羅 rm-12.mp3 (1.065MB)

単行本p179~181をイメージして漫才コンビ?の2人の掛け合いをワルツ風の3拍子でコミカルに表現した。打ち込みでは木管楽器のスウィングでおとぼけ感を出すのに苦労したが、さらに打楽器にはウッド・ブロックとシロフォン(高音域の木琴)を加えて滑稽さを増してみた。

13.飛翔、白銀のトリスタン rm-13.mp3 (1.643MB)

超文明国家ミューの設定からは、かつてのドイツ帝国の悪夢がちらついて見えた。それならワグナーだな、という結構安直な発想で考えたのが後半。主人公の乗る機でそれはどうかとも思ったが、このアイデアが頭から離れなくなった。名前も「トリスタン」だし、まぁいいか。だが一応はもう少し映画音楽っぽくした上にチェレスタを加えるなどして星空を悠然と飛行するイメージも添えた。この曲の元になったのは単行本にならなかったシーンで、雑誌の'90年7月号のp22~26のイメージで作った。クラッシュ・シンバルの前にある前半部の終わりで奏される重たい和音は、p24で「ドォーン」という衝撃音をたててトリスタンが空に消えるシーンをイメージしている。実は読んでいてなぜかNHKの「アインシュタイン・ロマン」(音楽:篠原敬介)の戦争のテーマの最後の和音が聴こえる気がしたので真似てみたものだ。前半はトリスタンがレアルに同調する場面で、その場の緊張感を表現してみた。

14.ネフティス vs. 那由羅 rm-14.mp3 (1.502MB)

雑誌の'92 3月号p10~11に2ページ分を使って掲載された1枚のイラストのみから2人の対決シーンをイメージして作った。やはり5度系の和音を使ってはいるが、もっと不協和な和音も加えて音域も重低音に偏らせ、民族楽器を多数加えることでもっとドロドロとしたイメージを強調した。冒頭の箏の音はイラストの那由羅のポーズから浮かんできたもの。音を厚く詰め込みすぎてしまったためにマラカスやグィロの音が応答遅れしてしまっている(MIDIの1ch当たりの通信レートには限界があるのでいっぺんに多数の音はシンセサイザーへ転送できない。わからない程度にタイミングずらせたりして調節するのが常套手段だが、それでも十分な効果を得られなかった。因みにその後作った曲では同じシンセサイザーをもう1台買って2chに振り分けるという力づくな方法も試した)。なお、スレーベル(鈴)の音だけがRolandの弦楽器専用音源SE-1のもの。弦楽器の特殊奏法の音を揃えるために購入したものの、日本のシンセサイザーの特徴である電子っぽい音が、メインで使っていたUltra Proteus(E-mu)の生っぽい音にうまく溶け込まないことがわかり、結局スレーベルだけに使ったという実に勿体ないお話。

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