金の枝の踊り-バレエ『かぐや姫』より (Dance of Golden Branch from the Ballet "Kaguyahime")

Toshiro Mayuzumi

黛 敏郎

BZCS 3076 / ベルウッド・レコード(株)

pf:花岡千春

やっと見つけた。黛のバレエ「かぐや姫」は、この「金の枝の踊り」1曲についてのみピアノ版の楽譜が存在(全音ピアノピース NO.333/難易度:C)しているだけで、他に情報や解説がほとんど見当たらず、詳しいことがわからない。ピアノピースを買って見よう見まねで自分でピアノを弾いたりしてみたものの、やはりちゃんとしたプロの演奏が聴きたかったのだが、録音も全音ピアノピースのCDシリーズに収録されていないかと探したりものの、やはり見つからなかったのだ。だから、このCDの存在を知った時は、その選曲のマニアックさに感激したのだが、残念なことにライナーにもこの曲の解説はほとんどといっていいほど無く、相変わらず良く分からない。

ワルツのリズムに乗ってちょっと複雑な和声進行をするこの曲からは、「かぐや姫」という題材から期待されるような日本風の響きは感じられず、むしろフランス近代作曲家の手による洒落た小品といった趣きである。それどころか、普段の黛作品から感じるエネルギッシュなバイタリティとは対極的な愛らしさを持っている。「音楽芸術」'97年6月号の特集記事「追悼・黛敏郎」に掲載された作品表によると、この曲は'51年1月にNHKのラジオで放送初演されたとある。'51年と言えば、黛がパリ国立高等音楽院(コンセルヴァトワール)に留学した年であるから、つまりこの作品は、留学前後の学生時代の作品なのだ。

CDのライナーには、「バレエ音楽からの抜粋、ピアノ編曲版」と書かれているのだが、むしろ上記の特集記事にある「バレエ『かぐや姫』のスケッチ」という記述の方が正確なのではあるまいか。想像するに、「かぐや姫」の全曲版あるいは管弦楽版は構想に終わったまま存在せず、ピアノスケッチのみが残されたのだ。音楽院の保守的な教育に失望した黛は、留学を1年で切り上げさっさと帰国してしまうのだが、帰国後は西洋の最先端の前衛様式を取り入れた作品で、現代音楽の雄として活躍していくことになる。であるから、「金の枝の踊り」から想像する限り、このような様式の「かぐや姫」がその後の黛にとって完成させるにはすでに陳腐化していたとしても不思議ではないだろう。その意味で、この「金の枝の踊り」は、黛の創作人生のごく一瞬を写し取った貴重な作品だと言えるのかも知れない。

ところで、「日本のシネマ~映画音楽作曲家のピアノ曲」と題したこのアルバムには、他に斎藤高順、松村禎三、早坂文雄、芥川也寸志、木下忠司の作品が収録されている。どちらかというと純音楽が本職で映画音楽でも活躍したというべき作曲家が多いので、このタイトルは違和感を感じなくもないが、併録曲では芥川の「こどものためのピアノ曲集『24の前奏曲』」が嬉しい。中でも第7曲 イ長調と第10曲 ホ短調は、芥川らしい浮遊感のある軽快な音楽で、ピアノ曲ながら管弦楽版が浮かんでくる楽しさである。

リスト(J-Classic トワイライトゾーン)へ
音楽の羅針盤 トップページへ

リンクはご自由にどうぞ。

Copyright (C)2008 Amasawa