交響曲「日本の城」 (Symphony "The Castle of Japan")

Hiro-oki Ogawa

小川 寛興

KICC 252 / キングレコード(株)

指揮:外山雄三/日本フィルハーモニー交響楽団
合唱:キング混声合唱団
龍笛:薗武史(独奏)、東儀文隆ほか、雅楽琵琶:薗広茂、薩摩琵琶:水藤錦穣、
尺八:横山勝也、箏:後藤すみ子、矢崎明子、十七弦箏:菊池悌子、
小鼓:堅田喜三久、大鼓:堅田啓光、法螺貝:園田芳龍、胡弓:荒川マリ子

この作品は明治百年記念芸術祭参加作品として昭和43年にキングレコードの企画により委嘱されたものである。当初は一発屋のマイナー曲だと思っていたため、現役盤が存在しない頃に深夜のバラエティ番組でBGMとして使われたのを聴いてびっくりしたことがあるが、どうやら知る人ぞ知る曲ともなっているらしくなんとCDで復活まで果たしたというのがこれ。作曲者の小川寛興は服部良一に作曲を師事し、TV番組の「月光仮面」や「仮面の忍者赤影」の音楽で知られている。

企画に際しては、外国人が日本のクラシック音楽に何を期待するかに配慮しつつ、日本的素材を用いながら前衛性を避け、しかも芸術性は失わないようにすることに腐心したという。それだけのことはあって、管弦楽に編入された邦楽器のオンパレードに加え、城の誕生から落城を物語風に描き最後は城への賛歌で終わるという、真に標題から期待される通りの音楽となっている。参考までに各楽章の概略を以下に示すが、()内に示したように第1~4楽章はそれぞれ異なる邦楽器をソリスティックに扱い、協奏曲風に仕立てられている。

第1楽章 「き(築城)」(箏)
      城の建築と町の人々の高揚感を描く意気揚揚とした音楽。
第2楽章 「天守の城」(尺八)
      城に暗雲が立ち込めるかのような尺八に導かれる不安気な音楽。
第3楽章 「戦いの城」(龍笛)
      城を巡る攻防戦を法螺貝まで加えて描く、雅楽や能楽に想を得た音楽。
第4楽章 「炎の城」(琵琶・胡弓)
      炎に包まれ落城していく城の無常感を描く語り物のような音楽。
第5楽章 「不滅の城」
      ヴォカリーズによる混声合唱により城への賛歌を謳う壮大な音楽。

ところで初期のレコードでは、木目調をあしらった凹凸が付いた立派な装丁の両開きジャケットで、14pにも亘る全曲の製版された2段略譜まで付いていた。見るところピアノで演奏できるように書かれているようであるが、練習番号まで付いているところを見ると合唱や編入楽器の練習用の伴奏版から起こしたものであろうか?ここで紹介したCD版では残念ながらこの楽譜と英語版の解説が除かれているが、ジャケットデザインは当時のものの写真を用いていて、雰囲気だけはわかるようになっている。

話が少し横道に逸れるが、ここで第1楽章に登場する箏について少し解説を加えてみる。「こと」という漢字には箏(そう)と琴(きん)の2種類あることにお気付きの方も多かろう。これらは実は異なる別の楽器である。前者には柱(じ)と呼ばれる可動式のフレットが付いていて、これを移動して音程の調節を行うが、後者にはこれがなく指で押さえる箇所を変えて音程の調節を行うのである。音楽番組などを聴いていると「そう」と音読みで発音し、きちんと区別することが多いが、世間一般には両者の区別を意識しないため混乱して用いられていることも多い。演奏会に用いられるのはほとんどが箏なのであるが、和琴(わごん)のように本当は箏であるのに琴と書く楽器があったりもすることも、ますます事態をややこしくしている要因である。

さて、この曲では箏(×2面)と十七弦箏(×1面)の2種類計3面が使われているが、前者は千数百年前から原型のある古典的な箏で、後世に登場した弦の数が多い箏と区別するためことさらに十三弦箏(じゅうさんげんそう)と呼ばれることもある。後者は近代になって演奏技術の幅を広げるために宮城道夫によって開発されたもので、文字通り弦の数が4本追加されている。この他にも、野坂恵子と三木稔によって開発された二十弦筝(後にさらに拡張され実際には二十一弦ある)などがあるが、現代のクラシック作品や現代邦楽などでは、これらの改良された箏が良く使われている。

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