アレグロ・アラ・ターラ ~ チェロ協奏曲第1番より

Masami Okamoto (Masami Yamamoto)

岡本 正美(山本 正美)

市販メディアなし

指揮:岡本正美
Vc:山本 祐ノ介 / 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

映画「男はつらいよ」の音楽などで知られる作曲家山本直純の家庭は音楽家一家であったという。父の直忠は作曲家兼指揮者、夫人の正美は作曲家、長男の純ノ介は作曲家、その夫人の山本きよみはピアニスト、二男の祐ノ介はチェリスト、その夫人の小山京子もピアニストという具合だ。かつて「題名のない音楽会」の「山本直純・華麗なる一族」という回でその話題が取り上げられ、ここで挙げた演奏はその時の収録によるものである。作曲者である岡本正美は、東京藝術大学在籍後、子育てが終わってから48歳で再び同大学の大学院に長男と共に入学、作曲を黛敏郎に師事することになり、学友の妻を生徒に持つことになった黛は驚いたらしい。

原曲は30分弱程度のチェロ協奏曲であるが、この「アレグロ・アラ・ターラ」はその終楽章(第3楽章)を独立させたものだという。LP化された記録もあるようだが、詳細はわからない。タイトルの由来は、番組中で司会者の黛敏郎が質問していたが、長話だったのか回答は途中から編集でカットされてしまっていて結局わからずじまい。インド音楽のリズム形式である「ターラ」と関係あるのだろうか?

音楽そのものは大衆色が強かった夫の作風と比べると、むしろもっとシリアスな現代音楽らしい作風と言えるが、この曲を聴く限りでは、だからと言って前衛とか難解ということはなく、芥川也寸志くらいの現代性と思えば良いのではないだろうか。クラシックを聴き慣れている人にとっては十分親しみ易いと言って良いだろう。

冒頭は、トンテントンテン...、とシンプルなティンパニのリズムに乗って、すぐに緊張感のある息の長いチェロの独奏が入る。時折、トリルや倍音奏法なども交えて視覚的にも見せ場を作っていく。中間部の山場では、エイエイエイ、と叩きつけんばかりにシンバルを伴う管弦楽の総奏が入るが、作曲者本人が夫に勝るとも劣らない巨漢を揺すって豪快に指揮する様は正に圧巻。その後再び冒頭のティンパニのリズムが再現し、次第に速度と音量を増しながら盛り上げていく。途中から倍速のリズムで2組目のティンパニが加わるが、ティンパニ奏者が2人いるところが、ふとニールセンの交響曲第4番「不滅」を思い出す。終結部はストラヴィンスキーの「春の祭典」のようにスパンと終わるが、最後に独奏チェロの単音がしばらく余韻を残す。

この作曲家の作品の音源はほとんど市販されていないが、この曲以外にも交響曲第3番「ノアの箱舟」とか交響組曲、日本のリズム「怒涛」とかなかなかそそるタイトルの曲があって、FONTECあたりで作品集でも出してくれないものだろうか。

ところで、女流作曲家によるチェロ協奏曲といえば、堀悦子の珍しいティンパニとの2重協奏曲「ティンパニ、チェロとオーケストラのための協奏曲」がすぐに思い浮かぶが、こちらはLPからCD化されたアルバム「現代日本チェロ名曲大系 Vol.1」で聴くことができる。岡本の曲よりもっと現代音楽的な感じがするが、これも名曲である。

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