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Kyrie:Canto Cybernetico

Fumitaka Anzai

安西 史孝

APR-001 / アプリコット

シンセサイザー:安西史孝
合唱:グリーンハーモニー合唱団
Vn:斉藤ネコ、S、A:芳賀美穂、鳥笛:巻上公一 ほか

タイトルは「キリエ(憐みの賛歌):サイバネティクスの歌」くらいの意味だろうか?(副題はラテン語でなくイタリア語のように思われるが、iでなくyになっているのはなぜだろう?)。「アンドロイドは電気仕掛けの神の夢を見るか?」なんてね。作曲者は主にシンセサイザーを使ったアニメや映画の音楽などで知られており、特にTVアニメ「うる星やつら」のサントラ・レコードのヒットは有名である。

解説にミサ曲と書いてあるわけではないが、楽章のタイトル構成からもこれを意識していることは明らかで、歌詞もマミク・リヨンの創作によるKyrie Eleison(主よ、憐み給え)を除けば、ミサの典礼文を中心に伝統的な内容で構成されている。実はこの題材は作曲者の体験に発想の原点があるようで、母がカトリック信者であったことからカトリック・ハイ・スクールに進学し、そこで実際の教会音楽に接する機会があったという。ただし第3、4楽章の合唱の編曲は本人ではなく、ユニットTPOで組んだ天野正道が担当している。

曲はMoogやRoland、E-muなどの多数のシンセサイザーを駆使し、これに声楽を加えたもので、簡単に言うとプログレ+テクノ+教会音楽+J-Popといった感じだ。ビートを利かせたノリの良い楽章が多いが、Gloria(栄光の賛歌)のようにクリスマス用CDにでも入れられそうないかにも宗教音楽っぽい感じのものがあるかと思えば、歌謡曲のようだったり、エレキギターが入ったり、あるいはバグ・パイプのような音で民族音楽調の要素が入ったりと、多彩な音楽形式がごった煮で詰め込まれている。

筆者が特に気に入っているのは5曲目のCredo(我信ず)で、ドラムセットとジャズのインプロビゼーションのようなピアノに乗って、ほとんど抑揚のないテノールで歌詞が詠唱され、そこに時々ライヴの歓声のような合唱や拍手が合いの手で入ったりする実にノリの良い楽章だ。こんな風にピアノが弾けたらさぞかし気持ち良かろう。

このCDは当時新宿の販売店から通販で手に入れたが、今ではネット上のサイトでも購入可能だ。

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