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ピアノ協奏曲 変ニ長調(Piano Concerto in D flat major)

Aram Ilych Khachaturian

アラム・ハチャトゥリアン

LONDON POCL-9729 / ポリドール(株)

指揮:ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス
        /ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
ピアノ:アリシア・デ・ラローチャ

ハチャトゥリアンのこのピアノ協奏曲の最も特異な点は、なんといっても第2楽章で主旋律をフレクサトーンのソロが奏でることである。フレクサトーンとは、両面にスチール製のワイヤーで支持されたボールが取り付けられた薄い金属板が握り手に結合されており、その握り手を左右に振ることでボールが交互に金属板に当たり、ヒョロロロロ~と独特な音を出す打楽器である。しかし、アクセントやおどけた効果音として2~3発挿入されるのを耳にすることはあるが、トレモロの持続を使ってソロ楽器として旋律の演奏に使用されるのは稀で、他の例として筆者が知っているのは映画「天地創造」(音楽:黛敏郎)のテーマと、同じくタイムスリップもののSF「ファイナル・カウントダウン」(音楽:ジョン・スコット)の「ミスター アンド ミセスタイドマン」くらいである(後者についてはそのうち別途書きたいが、岩崎宏美の大ヒット曲「聖母たちのララバイ」の原曲である)。

さすがにこんな需要の少ないものにソリストがなかなかいないのであろう、このソロは他の楽器で代替されることも多い。ある時、国内で演奏会があるというので喜んで出かけたら、ソロ楽器がミュージカル・ソー(大きな鋸をヴァイオリンの弓で弾く、落語でもお馴染みのあの楽器である)に置き換えられていてガッカリしたことがある。何せ手首でトレモロを続けながら指で金属板を押す力を調整することで音程を変えるのでやってみると結構難しい(簡単な楽器なぞないけれど)。しかしこのCDでは、実際にフレクサトーンで演奏されている。

輸入版で購入したLPの解説によると、アルメニアの民族楽器を模しているのだとか。第2楽章の冒頭、物語りを語り始めるかのようなバス・クラリネットの短い導入部に続いて、哀愁漂う主旋律をまずピアノが奏でる。強拍部に2度のテンションが付加された独特の響きが印象深いが、再度冒頭の部分が今度はピアノの左手に再現されるのに続いて、主旋律の2度目の繰り返しがフレクサトーンの口笛のような音色で奏される部分は1度聴いたら忘れがたい印象を残す。

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