オーケストラものに重点をおいた音楽への非正統派なご案内
Yasuo Higuchi樋口 康雄 |
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音楽配信、ダウンロード販売 演奏者:不明 待ちに待ったニュースが飛び込んで来た。あの「リーンの翼」のサウンドトラックがついに音源化されたのだ。まずは先行的に音楽配信やダウンロード販売が開始されたが、'23年にはCDも発売される予定だという。樋口康雄の数少ないフルオーケストレーションの劇伴音楽であり、長らく音源化が望まれていたものの、なぜか作品の公開から20年近くも実現していなかったのである。 作曲者は、手塚治虫の劇場映画 「火の鳥2772」の音楽でも知られている。作風は当時とは変わって、どちらかと言えば「機動新世紀ガンダムX」あたりに近いと言えるが、生き生きとした躍動感、絢爛たる色彩感のオーケストレーション、独特の声楽の扱いなど、樋口康雄を樋口康雄たらしめているその特徴はここでも健在である。 樋口康雄の音楽は、一言で言えば「いい音楽」である。あまりにも芸が無い表現だと言われればその通りなのだが、だって他に言いようが無いのだから仕方がない。お聴きになった方にはおわかりだろうが、次々と自然にあふれ出て来たようなその音楽は、他の誰の音楽でもないオリジナルなサウンドに満ちていながら、作為的な彫琢の跡や気負い、衒いといったものを何も感じさせることなく、生命感に溢れている。 アルバムは冒頭から早くも樋口ワールドが展開するが、筆者の最大のお気に入りは4曲目の「オーラロードの女たち」。第1話のラストで主人公エイサップ鈴木がバイストン・ウェル(作中に登場する異世界)に飛ばされるラストシーンに出て来る曲だが、短いながらも幻惑的な映像の奔流を彩る真にここは樋口康雄でなければならなかったのだと思わせる音楽である。筆者はこの曲がどうしても欲しくて、音盤化を待ち望んでいたと言える。他に作中ではほんの冒頭部分しか使用されない劇中歌「はじめてのおっぱい」や、トランペットのソロにジャズテイストを感じさせる「オーラよ、はずめ」(これは、これまでも「リーンの翼」のゲームでは聴くことができたらしい)も印象的である。 これらは、CG全盛期に入ってからすっかり凡庸化したハリウッドの劇伴音楽に良く見られる虚仮脅しとは一線も二線も画した、単なる劇伴には収まりきらない音楽達だと言えよう。今後のさらなる樋口音楽の復権にも期待したい。 樋口康雄の他の参考ページ |
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